ありがとう 方言一覧|全国の言い方・地域ごとの感謝の表現をまとめて紹介

気持ちを伝える方言集

「ありがとう」という感謝の言葉は、人と人との心を繋ぐ大切な言葉です。普段何気なく使っているこの言葉ですが、日本全国を見渡してみると、その土地ならではの温かい表現がたくさん存在します。この記事では、「ありがとう」の方言一覧を全国の地域ごとに詳しくご紹介します。有名な「おおきに」や「だんだん」から、少し変わった面白い表現まで、その語源や背景も交えてやさしく解説します。この記事を読めば、日本各地の感謝の表現を知ることができ、旅行先でのコミュニケーションがもっと楽しく、豊かになることでしょう。

「ありがとう」は方言でなんて言うの?有名な方言を紹介

まずは、テレビや映画などで耳にする機会も多い、特に有名な「ありがとう」の方言を3つご紹介します。これらの言葉が持つ意味や背景を知ることで、方言の奥深さに触れることができるでしょう。

関西地方の「おおきに」

「おおきに」は、京都や大阪をはじめとする関西地方で広く使われている感謝の言葉です。もともとは「大いに」や「大変」といった量を表す副詞で、「おおきに、ありがとう」のように感謝の言葉を強調する形で使われていました。 それが次第に省略され、「おおきに」だけで「ありがとう」という意味で使われるようになったのです。

特に商人文化が栄えた大阪では、商売の場面で「まいどおおきに(毎度ありがとうございます)」という形で頻繁に使われ、活気あるコミュニケーションを支えてきました。 京都で使われる「おおきに」は、大阪の元気な響きとは少し異なり、落ち着いた上品なニュアンスを持つのが特徴です。 現在では日常的に使う人は減ってきたと言われることもありますが、お店の挨拶などでは今でも大切にされている、関西を代表する温かい言葉です。

東北地方の「おしょうしな」「おしょすい」

「おしょうしな」は、主に山形県の米沢市を中心とした置賜(おきたま)地方で使われる「ありがとう」という意味の方言です。 その語源は「お笑止様(おしょうしさま)」にあるとされ、本来は「恥ずかしい」という意味でした。 相手からの親切や贈り物に対して、「こんなに良くしていただいて恥ずかしいほどです」という謙遜と恐縮の気持ちが、深い感謝の表現へと変化したのです。

より丁寧に伝えたいときには「おしょうしなっし」と言ったり、親しい間柄では「おしょうし」と短く言ったりすることもあります。 また、福島県の会津地方では、同じ語源を持つ「おしょすい」という言葉が使われています。 どちらの言葉も、相手への敬意と、へりくだった気持ちが込められた、非常に丁寧で美しい響きを持つ感謝の表現です。

山陰地方の「だんだん」

「だんだん」は、島根県(特に出雲地方)や鳥取県といった山陰地方で使われる、温かみのある「ありがとう」です。 この言葉の語源は、漢字の「段々」に由来し、「重ね重ね」「繰り返し」という意味合いがあります。つまり、「重ね重ね、ありがとうございます」という気持ちが込められているのです。

日常のささいなことへの感謝から、心からの大きな感謝まで、幅広い場面で使われる便利な言葉です。NHKの連続テレビ小説『だんだん』のタイトルにもなったことで全国的に知名度が上がりました。言葉の響きが柔らかく、どこか親しみやすい印象を与えるため、地元の人々の穏やかな人柄が表れているような方言と言えるでしょう。愛媛県など四国の一部でも使われています。

【地域別】全国の「ありがとう」の方言一覧

日本は北から南まで、気候や文化が実に多様です。それに伴い、「ありがとう」の表現も地域ごとに豊かなバリエーションがあります。ここでは、全国を6つのブロックに分け、それぞれの地域で使われている感謝の言葉を一覧でご紹介します。

北海道・東北地方の「ありがとう」の方言

広大な土地を持つ北海道と、豊かな自然に囲まれた東北地方では、実直で心温まる感謝の言葉が使われています。

・北海道:「ありがとう」が基本ですが、感謝の気持ちを伝える際に「いや、たいしたもんだ」「いつもすまないね」のように、相手を気遣う言葉を添えることがあります。これは、厳しい開拓時代を支え合った人々の、助け合いの精神が表れているのかもしれません。

・青森県:「ありがとうごす」という丁寧な言い方や、「めやぐだ」という独特の表現があります。 「めやぐだ」は「迷惑だ」が語源で、「ご迷惑をおかけして申し訳ないです、ありがとう」という謙遜の気持ちが込められています。

・岩手県:「ありがとうがんす」や、沿岸部の宮古地方などでは関西の影響を受けた「おおきに」も使われます。 また、「おもさげねえ」という言葉もあり、これは「申し訳ない」という気持ちを込めた感謝の表現です。

・宮城県:「ありがとうがす」「ありがとうござりす」といった言い方があります。 また、「まんずどうもね」という表現は、「本当にどうもありがとうね」というニュアンスで使われます。

・秋田県:「ありがとさん」と親しみを込めて言うほか、関西と同様の「おぎに」という言葉も使われます。

・山形県:有名な「おしょうしな」の他に、「ありがとさま」という丁寧な表現や、庄内地方で使われる「もっけだの」があります。 「もっけだの」は「勿怪(もっけ)の幸い」が語源で、思いがけない幸運への感謝を示す言葉です。

・福島県:「ありがとない」という少し変わった言い方があります。 否定形のように聞こえますが、しっかりとした感謝の言葉です。 また、会津地方では「おしょすい」が使われます。

関東・甲信越地方の「ありがとう」の方言

日本の中心である関東地方は標準語が主流ですが、周辺地域や甲信越地方には、地域色豊かな表現が残っています。

・関東地方(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・東京):基本的に標準語の「ありがとう」が使われますが、「あんがとね」(茨城・栃木)や「わりぃんね」(群馬)のように、語尾に特徴が出ることがあります。

・山梨県:「ありがとうごいす」や「ありがたいこんでごいす」といった丁寧な言い方があります。 「ごいす」は「ございます」が変化したもので、敬意を表す表現です。

・長野県:「ありがとうござんす」という昔ながらの言い方や、「きのどくね」という表現があります。 「きのどく」は、相手に手間をかけさせたことへの申し訳なさと感謝が入り混じった、奥深い言葉です。

・新潟県:標準語に近い「ありがとね」が一般的ですが、何かをもてなされた際に「ごちそうさんです」と感謝を伝えることもあります。

東海・北陸地方の「ありがとう」の方言

日本の東西を結ぶこの地域では、関西と関東の両方の影響を受けつつ、独自の言葉が育まれてきました。

・愛知県・岐阜県・静岡県・三重県:名古屋(愛知)では「ありがとう」が基本ですが、アクセントに特徴があります。 岐阜や三重では関西由来の「おおきに」や「おおきんな」が聞かれます。 静岡では「ありがとっけねー」という、跳ねるような語感の方言もあります。

・富山県・石川県・福井県:この3県で特徴的なのが「きのどくな」という表現です。 これは「(あなたに手間をかけさせて)気の毒なことをした、ありがとう」という、相手を気遣う気持ちから生まれた感謝の言葉です。 石川では親しい間柄で「あんやと」、福井では関西由来の「おおきに」も使われます。

近畿地方の「ありがとう」の方言

「おおきに」が代名詞の近畿地方ですが、地域や場面によって少しずつニュアンスの違う感謝の言葉が使われています。

・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県:「おおきに」が共通して使われます。 特に大阪では「まいどおおきに」が商売の挨拶として定着しています。 京都では、より丁寧で上品な響きで使われることが多いです。 訪問先から帰る際には、「おやかまっさん(お邪魔しました)」という言葉に感謝の気持ちを込めることもあります。和歌山では「おおきによ」と語尾が変わります。

中国・四国地方の「ありがとう」の方言

山陰の「だんだん」が有名ですが、それ以外にも地域ごとの特色ある言葉が存在します。

・鳥取県・島根県・愛媛県:「だんだん」が広く使われています。 何度も言いますが「重ね重ね」という意味が込められた、温かい感謝の言葉です。

・岡山県:「ありがとうござんす」という丁寧な言い方が聞かれます。

・広島県:「ありがとうあります」や「たいぎいことさしてすまんのう(大変なことをさせてごめんなさいね)」といった、相手への労いの気持ちを込めた表現があります。

・山口県:「たえがとうございます」という、少し変わった言い方があります。

・徳島県・香川県・高知県:これらの地域では標準語に近い「ありがとう」が一般的ですが、高知では関西の影響で「おおきに」が使われることもあります。

九州・沖縄地方の「ありがとう」の方言

日本の南に位置する九州・沖縄地方には、力強くも温かい、独特の感謝の言葉が息づいています。

・福岡県・佐賀県:「ありがとう」のほかに、関西や四国からの影響で「おおきに」が使われることがあります。

・長崎県:「ありがとうござす」という丁寧な言い方や、武士の言葉を思わせる「かたじけない」という表現が聞かれることもあります。

・熊本県:「ちょうじょう」という特徴的な言葉や、山陰や四国と同じ「だんだん」が使われます。

・大分県・宮崎県:「おおきに」や「かたじけない」が使われるほか、宮崎では「だんだん」も耳にします。

・鹿児島県:「あいがとさげもす」という、非常に丁寧で独特な響きを持つ言葉があります。「ありがとうごわす」とも言います。

・沖縄県:「にふぇーでーびる」という美しい響きの言葉が使われます。 これは「(二拝も三拝もするほど)ありがとうございます」という意味で、深い感謝と敬意が込められています。 宮古島では「たんでぃがーたんでぃ」と言います。

言い方いろいろ!特徴で分ける「ありがとう」の方言

これまで地域別に見てきましたが、ここでは少し視点を変えて、「響きのかわいらしさ」や「気持ちの伝わりやすさ」、「語源の面白さ」といった特徴で「ありがとう」の方言を分類してご紹介します。

かわいい響きの「ありがとう」の方言

方言には、その音の響きがどこか愛らしく、心を和ませてくれるものがあります。感謝の言葉がかわいい響きを持っていると、伝えられた側も自然と笑顔になりますよね。

例えば、石川県で使われる「あんやと」は、親しい人への感謝を込めた、短くて言いやすい言葉です。 山陰地方の「だんだん」も、その繰り返す音が優しく、温かい雰囲気を醸し出します。 関西の「おおきに」も、特に女性が使うと柔らかく、親しみやすい印象を与えます。山形県の「おしょうしな」も、丁寧さの中にどこか奥ゆかしく、かわいらしい響きを感じる人が多いようです。これらの言葉は、その土地の人々の人柄を映し出すかのように、温かく優しいコミュニケーションを生み出しています。

気持ちが強く伝わる「ありがとう」の方言

感謝の気持ちを、より深く、より丁寧に伝えたいときにぴったりの方言もあります。これらの言葉は、単なる感謝以上の、相手への深い敬意や感動を表現する力を持っています。

沖縄の「にふぇーでーびる」は、その代表格です。 直訳すると「二拝です」となり、「何度も頭を下げたいほど感謝しています」という、行動を伴うほどの強い感謝の気持ちが込められています。 同じく、鹿児島県の「あいがとさげもす」も、独特の丁寧な語尾が深い敬意を感じさせます。 また、山形県の「おしょうしな」も、「(こんなに良くしていただき)恥ずかしいほどです」という謙遜の気持ちが含まれているため、相手への心からの感謝が強く伝わる表現です。 これらの言葉を特別な場面で使うことができれば、あなたの感謝の気持ちは、きっと相手の心に深く響くことでしょう。

語源や由来が面白い「ありがとう」の方言

方言の中には、その成り立ちや語源を知ると「なるほど!」と膝を打ちたくなるような面白いものがたくさんあります。言葉の背景にある歴史や文化に触れることで、方言への理解がぐっと深まります。

例えば、山形県の「おしょうしな」は、元々「笑止千万(しょうしせんばん)」などと使われる「笑止(しょうし)」、つまり「恥ずかしい」という言葉から来ています。 相手の厚意に対して「恐縮です」という気持ちが感謝に転じた、日本らしい奥ゆかしさが感じられます。 また、長野県や富山県などで使われる「きのどくな」は、標準語では「気の毒な」という意味ですが、「あなたに骨を折らせて気の毒に思います。ありがとう」という、相手への配慮と感謝が一体となった表現です。 山陰地方の「だんだん」は、「段々」という言葉が「重ね重ね」という感謝の意味に発展したものです。言葉の由来を紐解くと、その土地の人々の価値観や気質が見えてきて、非常に興味深いものです。

「ありがとう」の方言を使うときの豆知識

その土地ならではの「ありがとう」を知ったら、実際に使ってみたくなりますよね。ここでは、方言を使う際に知っておくと便利な豆知識を3つご紹介します。より自然で、心に残るコミュニケーションの参考にしてください。

イントネーションで変わる「ありがとう」

方言の難しさの一つに、文字では伝わりにくいイントネーション(言葉の抑揚やアクセント)があります。同じ「ありがとう」という言葉でも、地域によってアクセントを置く場所が異なります。例えば、名古屋では「が」を、関西では「と」を高く発音する傾向があると言われています。

もし旅行先で方言を真似てみようと思っても、イントネーションが違うと、少し不自然に聞こえてしまったり、地元の人に「おや?」と思われたりするかもしれません。無理に完璧な発音を目指す必要はありませんが、映画やドラマ、あるいは現地の人々の会話に耳を澄ませて、自然なイントネーションを感じてみるのがおすすめです。言葉の響きを意識するだけで、よりその土地に溶け込んだコミュニケーションが楽しめるはずです。

感謝と謙遜が入り混じる「きのどくな」

長野県や富山県、石川県などで使われる「きのどくな」は、方言を知らない人が聞くと少し驚いてしまうかもしれません。 標準語の「気の毒な」は、相手をかわいそうに思う同情の言葉ですが、これらの地域では「ありがとう」という感謝の気持ちを表します。

この言葉の根底には、「自分のためにあなたに手間をかけさせてしまって申し訳ない、本当にありがとう」という、相手への深い配慮と謙遜の気持ちがあります。 何か親切にしてもらったときにこの言葉をかけられたら、それは相手からの心からの感謝のしるしです。こうした背景を知っておくことで、言葉の表面的な意味に戸惑うことなく、相手の温かい気持ちをしっかりと受け取ることができます。

旅行先で使ってみよう

旅行の醍醐味の一つは、地元の人々とのふれあいです。その際に、現地の「ありがとう」を使ってみると、きっと相手との距離がぐっと縮まります。完璧な発音でなくても、「おおきに」「だんだん」など、その土地の言葉で感謝を伝えようとする気持ちは、相手に喜ばれることが多いでしょう。

お店で買い物をしたときや、親切にしてもらったときなど、まずは簡単な場面で試してみてはいかがでしょうか。最初は少し恥ずかしいかもしれませんが、勇気を出して使ってみると、そこから会話が弾んだり、相手の笑顔が見られたりと、旅の素敵な思い出が増えるきっかけになるはずです。方言は、旅をより深く、心に残るものにしてくれる素晴らしいツールなのです。

「ありがとう」の方言を知って、もっと気持ちを伝えよう

今回は、「ありがとう」の方言一覧を、全国の地域別や言葉の特徴に分けてご紹介しました。

関西の「おおきに」や山陰の「だんだん」、東北の「おしょうしな」といった有名なものから、その土地ならではのユニークな表現まで、日本には実に多彩な感謝の言葉があることがお分かりいただけたと思います。 これらの方言は、単なる言葉の違いだけでなく、その地域の文化や歴史、人々の気質までも映し出しています。

「きのどくな」のように相手を気遣う気持ちが込められた言葉や、「にふぇーでーびる」のように深い敬意を表す言葉など、その背景を知ることで、感謝の気持ちをより豊かに表現できるかもしれません。 旅行などで訪れた際には、ぜひその土地の「ありがとう」を使ってみてください。きっと、あなたの感謝の気持ちがより深く相手に伝わり、心温まる交流が生まれることでしょう。

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